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宿泊施設の朝食・夕食料金の実態|160施設調査で見る価格差と2026年の食事トレンド

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宿泊施設において、食事(朝食・夕食)は「売上」と「顧客満足度」の双方に大きく影響する、非常に重要な要素です。
しかし、「現在の食事料金が適正なのか分からない」「価格を上げたいが、お客様の反応が不安」といった
現場での悩みを抱えるケースが少なくありません。
2026年現在、宿泊施設の朝食・夕食料金は「相場」ではなく「設計次第で大きく差がつく領域」へと変化しています。

近年は「泊食分離」の考え方が広がり、宿泊料金と食事料金を分けて考える機会が増えています。
これにより、食事は単なる付帯サービスではなく、独立した収益構造として設計すべき対象へと変化しています。

本記事では、宿力が支援する宿泊施設160件のデータをもとに、
「朝食・夕食の料金相場や分布」を整理しながら、
そこから見えてくる食事料金設計の考え方を解説します。
単なる相場紹介ではなく
「なぜその価格帯に集中しているのか」「どのように価格を設計すべきなのか」といった
実務に直結する視点で整理しています。

目次

泊食分離とは?宿泊施設の朝食・夕食料金が「見える化」する背景

近年、宿泊施設において「泊食分離」という考え方が広がっています。
これは単なる販売方法の変更ではなく、宿泊施設の収益構造や運営方針に大きく関わる変化です。

泊食分離とは何か

泊食分離とは「宿泊料金と食事料金を分けて販売する宿泊形態」を指します。
従来、特に旅館においては一泊二食付きのように、宿泊と食事が一体となった料金設定が一般的でした。
しかし、現在では、旅館・ホテルともに、宿泊と食事を分けて設計する流れが進んでいます。
この背景には、「訪日外国人旅行者の増加による旅行スタイルの多様化」「人手不足」「地域との連携」といった
変化があります。

そしてもう一つ重要なのが、
宿泊施設が「何で価値を作るのか」を明確にする必要が出てきている点です。
一体型の設計では、食事の役割やコストの妥当性が見えづらくなり
強みでない部分にも負担がかかりやすくなります。

一方で泊食分離にすることで、「食事を強みとして伸ばすのか」「宿泊に特化するのか」
あるいは「地域と連携するのか」
を宿泊施設ごとで選択できるようになります。
つまり泊食分離は、「自施設は何で選ばれるのか」を明確にするための重要な設計手法です。

なぜ今、食事料金の設計が重要なのか

泊食分離の導入により、食事料金は「見える化」されるようになります。
そして「見える化」することにより、次のメリットが生まれます。

  • 食事単体での利益が把握できる
  • 原価や人件費のバランスが見える
  • 価格調整がしやすくなる

一方で、これまで曖昧だった価格設定は通用しなくなり「なぜこの価格なのか」が問われるようになります。
食事は満足度に直結する一方でコスト負担も大きいため、感覚ではなく設計として考える必要がある領域です。

調査|160件の宿泊施設から見た朝食・夕食料金の実態と相場

ここまでは泊食分離の考え方の重要性を説明してきましたが
多くの宿泊施設は一体「どれくらいの価格で食事料金を設定」しているのでしょうか。

そこで、宿力が支援する宿泊施設160件を対象に調査を実施。
「朝食・夕食の料金」を中心に、「食事形式(バイキング・会席・セットメニューなど)」
「施設規模の違い」も踏まえて整理しています。

まず、実際の調査結果をもとに、「朝食・夕食の料金分布」を見ていきます。
※調査結果についての補足:食事料金は税込価格をベースに
500円単位で分類し平均値ではなく「価格帯の分布」に着目して分析しています。

調査結果①:宿泊施設における朝食料金の分布(施設規模別)

施設規模別の朝食の料金傾向を説明する画像
施設規模別の朝食の料金傾向を説明する画像

朝食料金は、全体として「1,000円台に集中する結果」となりました。
10室以下の施設では、「高単価路線の影響により3,000円以上の設定」も見られますが、
全体としては「1,000円〜1,999円の価格帯」が最も多くを占めています。

また101室以上の施設では、ビュッフェ形式が中心となる一方で、
ビジネスホテルやシティホテルも含まれるため「1,000円〜2,999円と幅広い価格帯」に分布しています。
100〜51室規模の施設では、ビュッフェとセットメニューがほぼ半数ずつとなっており、
その中でも「約半数が1,000円台」に設定されています。

このように施設規模による違いは一部見られるものの、
朝食料金は全体として一定の価格帯に収束していることが分かります。
これは、朝食が宿泊施設において
「利用のしやすさ」「価格の分かりやすさ」が重視される商品であるため
極端な価格設定になりにくい特徴があるためです。
朝食は「価格差が出にくく、設計によって差が出る領域」であるといえます。

調査結果②:宿泊施設の夕食料金分布(施設規模別)

多くの施設が「夕食の料金相場が分からない」と感じながら価格設定を行っています。
宿泊施設における夕食料金は、一般的な相場として5,000円〜10,000円前後を中心にしながら、施設の戦略や提供形式によって大きく差が生まれています。

施設規模別の夕食の料金傾向を説明する画像
施設規模別の夕食の料金傾向を説明する画像


夕食料金は、朝食と比較して「価格帯の幅が大きく、施設ごとの差が明確に表れる結果」となりました。

300〜101室規模の施設では、「夕食を提供しない施設も一定数」見られます。
これは、この規模帯にはビジネスホテルやシティホテルなど、館内で夕食を完結させる前提ではなく
外食や周辺飲食店の利用を前提とした運営形態の施設が多く含まれているためです。

特に都市部では飲食店の選択肢が豊富であることから、あえて夕食提供を行わず
その分宿泊料金や朝食に特化する設計も一般的になっています。

人手不足や運営効率の観点からも、夕食提供を持たないことで
オペレーション負荷を抑え、収益構造をシンプルにするという意図も見られます。

100〜51室規模の施設では、夕食料金は比較的取りやすい価格帯である
「8,000円以下に集中する傾向」が見られました。
一方で50室以下の施設では、低価格帯から高価格帯まで幅広く分布しており、
ターゲットやコンセプトによって価格設定が大きく異なることが分かります。

これは、夕食が単なる食事ではなく「施設の提供価値・ターゲット設定・収益構造」といった
「戦略そのものを反映する商品」であるためです。
夕食は「何を売るか」によって価格が決まる領域であるといえます。

調査結果③:食事形式別の料金傾向

【朝食の傾向】

食事形式別の朝食の料金傾向を説明する画像

バイキング・ハーフビュッフェ・セットメニューのいずれにおいても、
価格帯は大きく変わらず、1,000円〜1,999円に集中しています。

これは、朝食が「形式」そのものよりも
「利用のしやすさ・提供スピード・導線の分かりやすさ」で評価されやすく
形式が価格差の決定要因になりにくいためです。

【夕食の傾向】

食事形式別の夕食の料金傾向を説明する画像

一方で夕食は、会席・コース料理と定食・セット形式で明確な価格差が見られました。

会席・コース料理では「5,000円〜10,000円以上の価格帯が中心」となる一方で、
定食・セット形式では「比較的低価格帯に集中する傾向」があります。
この違いは、次のように料理の提供方法そのものが価値の感じ方に直結しているためです。

  • 会席やコース料理:一品ずつ提供されることで体験価値が高まる
  • 定食やセット:効率的に食事を完結できる

つまり、料理形式がそのまま価格差を生む構造になっています。

なぜ料理の価格差が生まれるのか|調査データから見える構造

前章までで、朝食と夕食では価格の分布や広がり方に明確な違いがあることが分かりました。
ここで重要なのは、その価格差を単なる「高い・安い」として捉えないことです。

本調査から見えてきたのは、料理の価格差は食材や品数といった表面的な違いではなく
宿泊施設の設計そのものの違いによって生まれているという点です。

朝食夕食の料金の価格差設計について説明する画像



つまり料理は結果であり、その裏側には

  • どのように売上を作るかという収益構造
  • どのように提供するかという運営設計
  • どの価値で選ばれるかという商品設計

が存在しています。

本章では、調査データをもとに、その構造を分解して整理します。

食事の価格差の傾向① 夕食は料理形式が価格帯を決める

夕食において最も大きく価格差を生んでいる要因は、料理の内容ではなく「提供形式」です。
調査結果を見ると、高価格帯の施設では会席やコース料理が中心となっており、
一品ずつ提供される構成が主流となっています。

一方で低価格帯では、定食やセット形式が多く、
料理が一度に提供されるシンプルな構成が中心です。
この違いは、単なる見た目の違いではありません。
次のように提供方法による違いが顕著に表れています。


つまり夕食は、料理の中身ではなく「どのように提供するか」の段階で価格帯が決まる構造になっています。
夕食単価を上げたい場合、料理の質を上げるだけでは不十分であり、提供形式そのものを見直す必要があります。

食事の価格差の傾向②:朝食は同一形式の中で差が生まれる

朝食は夕食とは異なり、価格差の生まれ方が大きく違います。
多くの施設でセットメニューやビュッフェ形式が採用されており、形式自体には大きな違いが見られません。

それにもかかわらず、価格には明確な差が存在しています。

この差を生んでいるのは、次のような朝食設計の積み上げです。

  • 品数や構成
  • 食材そのものの質
  • 盛り付けや魅せ方
  • 提供方法の工夫
  • 食事会場の雰囲気・空間設計

つまり朝食は、
同じ枠組みの中でどれだけ価値を積み上げられているかによって価格が分かれる構造になっています。
朝食は夕食のように形式を変えなくても、設計の見直しによって単価・満足度の両方を引き上げる余地があります。

特に朝食は、料金自体が大きく変わらない分、「どう見せるか」で選ばれ方に差が出やすい領域です。実際、画像の並びや構図を整えるだけで、朝食付きプランの選択率が改善するケースも多く見られます。宿泊施設における画像改善の具体例については、こちらの記事で詳しく解説しています。

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食事の価格差の傾向③: 施設規模によって価値の作り方」が変わる

価格帯と施設規模の関係を見ると、高価格帯は小規模施設に、低価格帯は中〜大規模施設に多い傾向
見られました。この違いは、料理の質ではなく「価値の作り方そのものが異なること」を意味しています。

小規模施設では「提供数が少ない・一組ごとに手間をかけて対応できる」といった条件があるため、
体験価値を高める設計が成立しやすくなります

一方で規模が大きくなると、「提供数が増える・オペレーション負荷が上がり人員成約が強くなる」ため
効率を前提とした設計が必要になります。

つまり「小規模=価値を積み上げる構造、大規模=効率で成立させる構造」という違いがあり
これが価格にも反映されています。
また、自施設の規模に合わない設計を採用すると、オペレーションか満足度のどちらかが崩れるリスクがあります。

食事の価格差の傾向まとめ:夕食は「戦略差」朝食は「設計差」で価格が分かれる

ここまでの内容を整理すると、夕食と朝食では価格差の生まれ方が根本的に異なります。
夕食は「どの形式を採用するか・どの役割を持たせるか」といった「戦略」によって価格が決まります。
一方で朝食は、「同じ形式の中でどれだけ価値を作り込めるか」といった「設計の密度」によって差が生まれます。

つまり「夕食=戦略で分かれる領域 朝食=磨き込みで差が出る領域」という構造です。
本調査から明らかになったのは、料理の価格差は
「何を使っているか」ではなく「どう設計されているか」によって生まれているという点です。

「高価格帯の食事設計」に共通する特徴



前章では、料理の価格差が「設計の違い」によって生まれている構造を整理しました。
ここでは、その構造を踏まえたうえで、実際に高価格帯の施設が
どのような料理設計を行っているのかを具体的に見ていきます。

重要なのは、単に価格が高いことではなく、その価格でも選ばれる理由が料理側に存在しているかどうかです。

「高価格帯の食事設計」の特徴①:夕食は「一連の体験」として成立している

高価格帯の夕食では、料理が単体で完結していません。
一品一品が独立しているのではなく「前菜からデザートまでの流れ・味や温度の変化・提供タイミング」まで
一つの体験として設計されています。
そのため、食事は「何を食べたか」だけでなく、「どういう時間を過ごしたか」として記憶に残ります。

これは単なる料理の良し悪しではなく、体験として設計されているかどうかの違いです。
高単価を狙う場合、料理単体ではなく「体験としての流れを設計」しない限り価格は上がりません。

なお、夕食を「体験商品」として成立させるためには、料理内容だけでなく写真でどう伝えられているかも非常に重要です。実際に多くの施設で、夕食写真を見直したことで夕食付プランの選択率が改善したケースが見られます。撮影段階で押さえるべきポイントについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

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高価格帯の食事設計」の特徴②:料理に「意味」があり、言語化できる

高価格帯の施設では、次のように料理に明確な意味づけがされています。

  • なぜこの食材を使っているのか
  • どこの地域の食材を使用し、料理を再現しているのか?
  • どのような意図でこの構成になっているのか

この意味付けにより、お客様は料理を「消費するもの」ではなく
料理の価値を理解しながら体験するものとして受け取ります。
その結果、価格に対して納得感が生まれやすくなります。
単に良い食材を使うのではなく
価格を上げるには、料理の価値を「言語化できる状態」にする必要があります。

料理の価格は、内容だけでなく「実際に体験した人の声」によっても納得感が左右されます。特に食事に関するクチコミは、これから検討するゲストにとって重要な判断材料です。売れている宿がどのようにクチコミ対応を行っているのかについては、こちらの記事で整理しています。

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高価格帯の食事設計」の特徴③:空間・提供方法を含めて価値が構成されている

高価格帯の施設では、料理だけで価値を作っていません。
「提供場所(個室・半個室)」「照明や音、席配置」「器の統一感」「スタッフの説明や所作」
といった要素も含めて、食事全体が設計されています。

つまり価格は、料理単体ではなく「その時間と空間全体」に対して支払われている状態です。
この設計があることで、単価を上げても満足度が維持されます。

料理単体で単価を上げるのではなく、「提供体験全体で価値を作る」必要があります。

高価格帯の食事設計」の特徴④:朝食は「整っている」ことで価値を生んでいる

高価格帯の朝食は、夕食のような派手さはありませんが次のような点で
実は丁寧に整えられているという特徴があります。

  • 無理なく食べられるボリューム構成
  • 体に負担がかからない内容
  • 必要な満足感が得られる設計
  • 朝の時間に合った提供スピード

その結果、「ちょうど良い満足感」が生まれます。
これは豪華さではなく「整っていること」による価値です
朝食は豪華にするよりも「ちょうど良い状態を設計する」ことで単価と満足度が両立します。

「低価格帯の食事設計」に共通する特徴

一方で、低価格帯の施設では、価格を抑えながら成立させるための設計が行われています。
ここで重要なのは、単にコストを削っているのではなく「無理なく回る構造」を前提に設計されている点です。

「低価格帯の食事設計」の特徴①:夕食は「利用しやすさ」を最優先に設計されている

低価格帯の夕食は、内容の豪華さよりも
「分かりやすさ・利用しやすさ・判断しやすさ」が重視されています。
そのため、定食やセット形式が中心となり、
メニュー内容が一目で理解できる構成になっています。

これにより、お客様は迷うことなく利用を決めやすくなります。
つまり価値は「選びやすさ・使いやすさ」にあります。
低価格帯では、内容を強くするよりも“選ばれやすい設計”にする方が売上につながります。

「低価格帯の食事設計」の特徴②:体験ではなく「機能」として成立している

低価格帯の施設では「特別感・ストーリー性・演出」といった要素は最小限に抑えられています。
その代わりに、次のような点が重視されています。

  • 必要な食事として成立している
  • 安定して提供できる
  • コストと手間のバランスが取れている

つまり料理は「体験商品」ではなく「機能商品」として設計されています。
低価格帯で無理に体験価値を追求すると、コストだけが増えて収益が崩れるリスクがあります。

「低価格帯の食事設計」の特徴③:朝食は短時間で成立する設計になっている

低価格帯の朝食は、「シンプルな構成」「セルフサービス」「短時間利用」を前提に設計されています。
これは、朝食が短時間に集中するため、効率よく提供できることが最優先になるためです。

結果として、「人手を増やさず、一定品質を維持しながら回転率を確保する構造」になっています。
朝食は“いかに効率よく回せるか”を設計しないと、利益が出ない構造になります。

「低価格帯の食事設計」の特徴④:全体として「運用」で成立させる設計になっている

低価格帯の施設に共通しているのは
「調理負荷を抑える・提供方法をシンプルにする・人員を増やしすぎない」といった設計です。
つまり、料理で価値を上げるのではなく、運用で成立させる構造になっています。

これにより、価格を抑えながらも、一定の収益を確保することが可能になります。
低価格帯では、料理の強化ではなく「運用最適化」が収益改善の鍵になります。

2026年の朝食・夕食トレンド|宿泊施設の食事料金設計はどう変わるのか

ここまでの調査から、食事料金は単なる相場ではなく
「設計」によって大きく変わることが分かりました。
では、その設計は今後どの方向に進むのか。

2026年現在、宿泊施設を取り巻く環境は次のように大きく変化しています。

  • インバウンド需要の回復と質の変化
  • 物価上昇によるコスト構造の変化
  • 人手不足の慢性化
  • 旅行者の価値観の変化(価格より納得感)

これらが同時に進んだ結果、「なんとなく付いている食事」は選ばれなくなり、
「意味のある食事」だけが選ばれる時代に入っています。
本章では、この変化が現場に何を求めているのかを整理します。

トレンドの傾向①:食事は「付帯サービス」から「選ばれる理由」へ変わっている

従来、食事は宿泊に付随するサービスとして扱われることが多く、
「一定の満足があれば良い」という位置づけでも成立していました。
しかし現在は、次のような動きが強くなっています。

  • インバウンド需要の回復と質の変化
  • 物価上昇によるコスト構造の変化
  • 人手不足の慢性化
  • 旅行者の価値観の変化(価格より納得感)

特にインバウンド需要の回復により「体験としての食事」が重視される傾向が顕著になっています。
その結果「どこでも食べられる内容は比較されやすく、その場所でしか成立しない内容は選ばれやすい」という
構造に変化しています。
つまり食事は、あって当たり前ではなく「選ばれる理由として設計する必要がある領域」になっています。

トレンドの傾向②:価格は「安いか」ではなく「納得できるか」で判断される

物価上昇により、食事の価格は今後も上昇傾向が続くと考えられます。
その中で変化しているのは、価格そのものではなく「お客様の判断基準」です。

従来は「安いかどうか・他と比べてどうか」が重視されていましたが
現在は「この内容でこの価格なら納得できるか」が判断基準になっています。

つまり「説明できない価格 → 高いと感じる」「理由がある価格 → 納得される」という構造です。
この変化により、単純な値下げや横並びの価格設定ではなく「価格の理由を設計することが重要」になっています。

値上げの可否は価格ではなく、「その価格を説明できるかどうかで判断する」必要があります。

トレンドの傾向③:夕食は「量・豪華さ」から「体験価値」へ完全にシフトしている

夕食においては、評価基準が明確に変わっています。
従来は「ボリューム・・品数・見た目の豪華さ」が評価されやすい要素でした。
しかし現在は「食べきれないストレス・健康志向の高まり・外食レベルの向上」といった背景から
「量よりも質」へとシフトしています。

さらに重要なのは、「料理そのもの」ではなく「体験として成立しているか」が評価されている点です。
「提供の流れ・説明・空間・演出」これらを含めて、価値が判断されます。

つまり夕食は、料理ではなく「体験商品」として設計される必要がある領域です。
夕食単価を上げるには、料理の量を増やすのではなく、体験としての価値を設計する必要があります。

トレンドの傾向④:朝食は「満腹」から「コンディション設計」へ変わっている

朝食もまた、役割が大きく変わっています。
従来は「品数が多い・朝からしっかり食べられる」といった要素が重視されていました。

しかし現在は、「朝から移動する・観光やアクティビティに参加する・短時間で行動する」といった
旅行スタイルの変化により「朝にちょうどいい食事」が求められています。

具体的には、次のような設計が求められる傾向にあります。

  • 軽くも重くも調整できる
  • 体に負担が少ない
  • 短時間で利用できる

つまり朝食は「満腹にする食事から整える食事」へと変化しています。

朝食は豪華さではなく、「利用しやすさと体への適合性」を設計することで評価が上がります。

トレンドの傾向⑤:人手不足の中で「成立する設計」が前提になる

2026年の宿泊業界において、避けて通れないのが人手不足です。

そのため食事設計は、「作れるかどうか」ではなく
次のような「無理なく回るかどうか」が前提になります。

  • ピーク時に提供が間に合うか
  • 人員が足りなくても品質を維持できるか
  • 属人化せずに運営できるか

どれだけ良い内容でも、安定して提供できなければ評価は下がります。
これからの食事設計は魅力と同時に再現性(回せるか)を満たす必要があります。

トレンドの傾向まとめ:これからの食事設計は「5つの視点」で整理する

ここまでの内容を踏まえると、
2026年以降の食事設計は次の5つの視点で整理することが重要です。

  • 地域性
  • 納得感
  • 運用性
  • コンディション(朝食)
  • 体験価値(夕食)



これらをバランスよく満たすことで、
価格ではなく価値で選ばれる状態を作ることができます。
すべてを一度に変えるのではなく、「自施設で最も弱い要素」から改善することが重要です。

実在施設に見る食事設計の最前線(星野リゾート界/里山十帖)

ここまで見てきたトレンドは、すでに一部の宿泊施設では具体的な形として実装されています。
重要なのは、特別な取り組みをしている施設があるということではなく
「食事をどう設計するか」が、実際に評価や価格に直結しているという点です。

ここでは、実在する宿泊施設の事例をもとに、
どのように食事が設計され、どのように価値として成立しているのかを見ていきます。
ポイントは、同じことを再現することではなく「なぜその設計で成立しているのか」を読み取ることです。

食事設計の最前線事例①:星野リゾート 界

地域性を「体験化」する会席設計
界ブランドでは、すべての施設において
「その土地らしさ」を軸に食事が設計されています。

夕食は単なる会席料理ではなく、次の要素が一体となっています。

  • 地域食材の活用
  • 郷土料理の再構成
  • 文化的背景の組み込み

例えば、地域ごとに異なる食文化をテーマにしたコース構成や、
料理の説明・演出を含めた提供によって「その地域を体験するための食事」として成立しています。
重要なのは、食材の質ではなく意味を持たせていることです。
地元食材を使うだけでは単価は上がらず、 「なぜそれを出すのか」を設計できて初めて価格が成立します。

食事設計の最前線事例②:里山十帖

朝食を「コンディション設計」として再定義。
里山十帖の朝食は、「体感するメディア」というコンセプトのもと
「日本の朝食・一汁三菜」をテーマに設計されています。

特徴的なのは、主役が汁(味噌汁)である点です。

  • 天然木桶醸造の味噌を使用
  • 自分で味噌汁を作る体験
  • 野菜をしっかり摂る構成

また、次のように一汁三菜を現代的に再設計されています。

  • サラダの代わりに具だくさんの味噌汁
  • ヨーグルトの代わりに発酵食品
  • ハム・ソーセージの代わりに魚料理

見た目の豪華さはありませんが「無添加・オーガニック・体への負担を考慮」といった点が徹底されており
「ちょうど良い満足」「身体への価値」を両立しています。
ここで重要なのは何を足すかではなく「何を置き換えるかで価値を作っている点」です。

まとめ|食事価格は「設計」で決まる時代へ

本調査から見えてきたのは、食事の価格は相場ではなく、
宿泊施設ごとの「設計」によって決まっているという点です。

夕食は「どのような体験として提供するか」という戦略によって価格が分かれ
朝食は「どこまで価値を作り込めるか」という設計の精度によって差が生まれます。
また、高価格帯と低価格帯では、
「体験で価値を作るのか」「運用で成立させるのか」という考え方の違いも明確に見られました。

また、食事を商品として設計することで、リアルエージェント経由の団体需要でも単価を維持・向上させることが可能になります。以下の記事でリアルエージェントについても詳しくまとめています。

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リアルエージェントの役割はどう変わった?宿泊施設が押さえるべき団体需要と最適な活用方法

さらに2026年現在は、
食事は付帯サービスではなく「選ばれる理由」になり、
価格は「安さ」ではなく「納得感」で判断される時代に変化しています。
その中で重要なのは、 自施設は何で価値を作るのかを明確にすることです。

重要なのは、次のポイントです。

  • 夕食は戦略を決めない限り単価は上がらない
  • 朝食は設計の改善で価値を引き上げられる
  • 食事は作るものではなく「設計」するもの

つまり、これから求められるのは 「どの価格帯で勝つか」ではなく「どの価値で選ばれるか」を決めることです。

この視点を持つことが、これからの集客と売上を大きく左右していくことでしょう。
特に宿泊施設における朝食・夕食の料金設計は、レベニューマネジメントの一部として再設計する必要があります。
朝食・夕食の料金設計は、宿泊施設において今後ますます「売上構造そのもの」を左右する重要なテーマになります。

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