
宿泊業界では、「中抜け勤務」という働き方が長年一般的に行われてきました。
特に旅館業では、1泊2食を中心とした営業スタイルが広がった高度経済成長期以降
中抜け勤務が全国的に定着していったと考えられています。
旅館・ホテルでは、朝食対応やチェックアウト対応、チェックイン対応、夕食提供など
業務が特定の時間帯に集中します。
そのため、日中の比較的業務が落ち着く時間帯に長い休憩を挟み
朝と夕方〜夜に再び勤務する「中抜け勤務」が宿泊業特有のシフトとして広く採用されてきました。
宿泊業界における中抜け勤務は、こうした業務構造から自然に生まれた働き方とも言えます。
一方で近年は、働き方に対する価値観の変化や人材不足の深刻化により
中抜け勤務そのものを見直す動きも増えています。
特に若手人材を中心に、「拘束時間が長く感じやすい」「家庭やプライベートとの両立が難しい」といった
課題が挙げられるようになり、採用や従業員の定着にも影響を与え始めています。
宿泊業界は今、「これまで当たり前だった働き方」を見直す転換期に入っています。
そこで、今回宿力では、全国の宿泊施設を対象に
「中抜け勤務」に関する独自アンケート調査を実施しました。
本記事では、中抜け勤務の基本的な仕組み、部門ごとの勤務の実態
さらに、働き方改革まで宿泊業界の現場視点で整理・解説します。
本記事では、単純に「中抜け勤務は良い・悪い」と結論づけるのではなく
「なぜ今も残っているのか」「現場ではどのような工夫が行われているのか」といった
宿泊業界特有の構造にも踏み込みながら考えていきます。
中抜け勤務とは?|宿泊業界で定着した背景と実態
宿泊業界では、「中抜け勤務」という働き方が長年一般的に行われてきました。
しかし、宿泊業界以外ではあまり馴染みのない働き方でもあるため
「そもそも中抜け勤務とは何か?」が分かりづらい方も多いかと思います。
特に旅館・ホテルでは、朝食や夕食、チェックイン・チェックアウトなど
お客様対応が特定の時間帯に集中します。
一方で、日中は比較的業務量が落ち着く施設も多く
こうした宿泊業特有の営業構造が中抜け勤務を生み出してきました。
また近年は、人手不足や採用難、働き方改革の影響から、中抜け勤務そのものを見直す施設も増え始めています。
一方で、地方旅館や小規模施設では「すぐに廃止するのは難しい」という現実もあります。
まずは、中抜け勤務がどのような働き方なのか、なぜ宿泊業界で広く定着してきたのかを整理していきます。
中抜け勤務とは①:どんな働き方か?
中抜け勤務とは、1日の勤務を「朝勤務」と「夕方〜夜勤務」に分け
その間に長時間の休憩を挟む勤務形態のことを指します。
例えば旅館では、朝食対応やチェックアウト対応を行った後
昼間に数時間の休憩を取り、再び夕方からチェックイン対応や夕食提供に入るシフトが代表的です。

一般企業のような「9時〜18時」の連続勤務とは異なり
1日の中で一度仕事を離れ、再び勤務に戻る点が大きな特徴です。
また、中抜け勤務では「実働時間」と「拘束時間」が異なる点も重要です。
例えば実際の労働時間が8時間でも
朝6時から勤務を開始し夜21時頃に業務終了となるケースでは
スタッフ側としては「1日が仕事中心になる感覚」を持ちやすくなります。
この「拘束時間の長さ」が近年課題として指摘されることが増えています。
中抜け勤務とは②:なぜ宿泊業では中抜け勤務が多いのか?
中抜け勤務は、単なる昔ながらの慣習だけで続いているわけではありません。
宿泊業界には、中抜け勤務が発生しやすい構造があります。
特に旅館では、「1泊2食型」の営業スタイルが今も多く残っています。
朝食提供、チェックアウト対応、夕食提供、チェックイン対応などが特定の時間帯に集中しやすく
反対に昼間は比較的落ち着く施設も少なくありません。
つまり宿泊業は、「忙しい時間帯」と「比較的落ち着く時間帯」の差が非常に大きい業界なのです。

さらに、地方の小規模旅館では、限られた人数で営業を回しているケースも多くあります。
常にフル人数を配置することが難しいため、「必要な時間帯に人員を集中させる」という考え方から
中抜け勤務が採用されてきた背景があります。
中抜け勤務とは③:担当制接客文化も中抜け勤務を生みやすくしている
旅館には「担当制接客」と呼ばれる文化があります。
これは、一組のお客様に対して同じスタッフが継続的に接客を行うスタイルです。
例えば、チェックイン時のお出迎えから、客室案内、夕食提供
翌朝の朝食対応、チェックアウト時のお見送りまで、同じスタッフが担当するケースもあります。
この接客スタイルは「旅館らしいおもてなし」を支える大きな特徴でもあります。
一方で、「同じスタッフが朝も夜も必要になる」という構造にもつながるため、中抜け勤務が発生しやすくなります。
特に高級旅館や伝統旅館では、この接客文化を重視する施設も多く
一般企業のような完全シフト制へ単純に切り替えづらい側面もあります。
つまり、中抜け勤務は、単なるシフト問題ではなく
日本旅館特有の接客文化とも深く結びついている働き方なのです。
【実録調査】全国66の宿泊施設の中抜け勤務を宿力がアンケート調査
ここまでは、まず最初に「中抜け勤務が宿泊業界で定着してきた背景」について整理してきました。
一方で、実際の現場では
「どの程度の施設が中抜け勤務を導入しているのか」「どの規模の施設で多く、発生しやすいのか」といった実態は
外からは見えづらい部分があります。
そこで宿力では、全国の宿泊施設66施設を対象に、中抜け勤務に関するアンケート調査を実施しました。
今回の調査では、中抜け勤務の実施状況に加え
客室数別の傾向や、セクション別の実施状況についても集計しています。
調査結果を見ると、中抜け勤務はすべての施設で一律に行われているわけではなく
施設規模や業務内容によって実施状況に違いがあることが分かりました。
調査結果①:66施設中30施設が中抜け勤務を実施

この結果からも分かるように、中抜け勤務は現在も宿泊業界に一定数残っている働き方です。
今回の調査では、66施設のうち30施設が「中抜け勤務あり」と回答しました。
割合にすると、全体の約45%です。
つまり、今回調査した施設のうち、半数弱の施設で中抜け勤務が実施されていることになります。
一方で、36施設は「中抜け勤務なし」と回答しており
中抜け勤務を行っていない施設も全体の半数以上を占めています。
この結果から分かるのは、中抜け勤務は宿泊業界に根強く残っている一方で
すべての施設に共通する働き方ではないということです。
施設の営業形態、食事提供の有無、人員体制、客室規模によって
中抜け勤務の必要性には大きな差がありました。
次にその差について解説していきます。
調査結果②:客室数別では1〜20室の小規模施設で実施率が高い

客室数別に見ると、中抜け勤務の実施率が最も高かったのは1〜20室の小規模施設でした。
1〜20室の施設では、23施設中15施設が中抜け勤務を実施しており、実施率は約65%となっています。
これは、小規模施設ほど限られた人数で朝夕の業務ピークに対応する必要があるためです。
特に旅館では、「朝食対応やチェックアウト対応」「夕食準備、チェックイン対応、夕食提供」など
業務が時間帯によって大きく偏ります。
小規模施設の場合、部署ごとに十分な人員を分けて配置することが難しく
同じスタッフが朝と夕方以降の両方を担当するケースも少なくありません。
そのため、日中に長めの休憩を挟みながら
朝夕のピークに人員を集中させる中抜け勤務が発生しやすいと考えられます。
客室数別の結果は以下の通りです。
- 1〜20室:23施設中15施設が実施/実施率65%
- 21〜40室:13施設中4施設が実施/実施率31%
- 41〜80室:9施設中4施設が実施/実施率44%
- 81室以上:21施設中7施設が実施/実施率33%
この結果を見ると、必ずしも客室数が多いほど中抜け勤務が少なくなるとは一概には言えません。
ただし、1〜20室の小規模施設で実施率が高い点は明確です。
小規模施設では、少人数運営になりやすく、朝夕のピークに対応するための人員余力が限られています。
一方で、客室数が多い施設では、部署ごとの分業や複数シフト制を組みやすく
中抜け勤務以外の運用を取り入れやすい傾向があります。
調査結果③:セクション別では調理部の実施率が最も高い

中抜け勤務を実施している30施設を対象に
どのセクションで中抜け勤務が行われているかを確認したところ、最も多かったのは調理部でした。
調理部では、30施設中24施設が中抜け勤務を実施しており、割合は80%となっています。
これは、宿泊施設の食事提供が朝食と夕食に集中しやすいことが大きく関係しています。
調理部では、朝食準備から提供、片付けまでを終えた後
日中は仕込みや準備業務があるものの、営業ピークとしては一度落ち着く時間帯が発生します。
そして夕方以降になると、夕食準備、盛り付け、提供対応が再び集中します。
そのため、朝と夜の両方に人員が必要となり、中抜け勤務が発生しやすい構造になっています。
セクション別の結果は以下の通りです。
- 調理部:24施設/80%
- 宿泊部:17施設/57%
- 料飲部:14施設/47%
- 清掃部:0施設/0%
宿泊部でも17施設、料飲部でも14施設が中抜け勤務を実施しており
チェックイン・チェックアウトや食事提供に関わる部門では、中抜け勤務が比較的発生しやすい傾向が見られます。
一方で、清掃部では中抜け勤務の実施は0施設でした。
これは、清掃業務がチェックアウト後からチェックイン前までの時間帯に集中しやすく
比較的連続した時間の中で業務が完結しやすいためと考えられます。
つまり、中抜け勤務は宿泊施設全体で一律に発生しているのではなく
朝夕に業務ピークがある部門ほど発生しやすい働き方だと言えます。
調理部で中抜け勤務が多い背景には、朝食と夕食に業務が集中する宿泊業特有の構造があります。
この「食事を軸にした業務設計」は、実は価格や商品設計とも密接に関係しています。
宿泊施設における朝食・夕食の料金設計と運用の考え方については、こちらの記事でも詳しく整理しています。
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宿泊施設の朝食・夕食料金の実態|160施設調査で見る価格差と2026年の食事トレンド
【調査分析】なぜ中抜け勤務はなくならないのか|宿泊業界特有の構造課題と理由
今回の調査では、中抜け勤務を実施している施設の多くが、「人手不足」を背景として挙げていました。
しかし実際には、中抜け勤務は「単純な人員不足」だけで発生しているわけではありません。
宿泊業界特有の営業構造や人員体制、家族経営ならではの運営実態など
さまざまな要素が複雑に重なり合いながら現在の勤務構造が成り立っています。
ここでは、現場から寄せられた声や調査結果をもとに
「なぜ中抜け勤務が残り続けているのか」という背景を整理していきます。
調査分析①:中抜け勤務を「やめたいがやめられない」施設が多い背景
今回の調査では、中抜け勤務を実施している30施設のうち、17施設が「人手不足」を理由として挙げていました。
宿泊業界では現在も慢性的な人材不足が続いており
特に地方旅館では「必要人数を確保できない」「採用しても人材が定着しづらい」といった
課題を抱える施設も少なくありません。
そのため、中抜け勤務を見直したくても次のような現実的な問題が発生しています。
- 通し勤務へ移行する人員の余力がない
- シフトを組み直せない
- 朝夕それぞれ専任スタッフを配置できない
特に小規模旅館では、少人数で営業しているケースも多く
理想的なシフト設計をしたくても、現実的には難しい場面があります。
つまり中抜け勤務は、「古い慣習だから残っている」だけではなく
「現在の人材不足構造」によって維持されている側面もあるのです。
調査分析②:「人手不足だけではない」現場事情もある
一方で、現場から寄せられた声を見ると
中抜け勤務は単純に「人が足りないから発生している」だけではなく
宿泊業特有の営業構造や運営体制とも深く関係していることが分かります。
特に多く見られたのが、小規模旅館特有の「分業の難しさ」です。
旅館では、ホテルのように部署ごとに細かく役割分担されていない施設も多くあります。
そのため、同じスタッフが「チェックアウト対応、清掃、チェックイン対応、食事提供」まで
連続して担当するケースも少なくありません。
現場からは「忙しい日はチェックアウト後に清掃へ入り、そのままチェックイン、夕食対応まで続く」という声もありました。
また調理部門では、「朝食対応 → 仕込み → 中抜け → 夕食対応」という流れが一般的になっている施設も多く
食事提供時間に合わせて勤務が分断されやすい構造があります。
つまり中抜け勤務は、単に昔から残っている働き方ではなく
「宿泊施設の営業構造そのものと結びついている側面」があるのです。
調査分析③:家族経営特有の働き方も影響している
今回の調査では、家族経営ならではの実態についての声も見られました。
宿泊業界では現在も家族経営の施設が多く存在しています。
特に旅館では、女将や家族、役員クラスが長時間現場に入りながら営業を支えているケースも少なくありません。
現場からは「家族経営のため時間管理が曖昧になりやすい」という声もありました。
また「家族が長時間現場に入り、一般スタッフを中抜けや休憩へ回している」という実態も見られます。
宿泊業界では、「経営と現場が近い施設」も多くあります。
そのため一般企業と比較すると
「役員も現場へ入り、家族が現場を支える」「長時間勤務が常態化しやすい」といった特徴があり
それが現在のシフト構造にも影響しています。
つまり中抜け勤務を考える際には、単純な「シフト問題」だけではなく
宿泊業界特有の経営構造まで含めて考える必要があるのです。
調査分析④:施設によって中抜け勤務の「濃度」も大きく異なる
今回の調査では、「施設全体で中抜け勤務を行っている」というケースばかりではありませんでした。
実際には「調理場だけ中抜け勤務」「宴会サービス時のみ発生」など
施設によって運用方法に大きな違いがあります。
例えば「調理場以外は中抜けなし」という施設もあれば、
「宴会サービス時のみ月に数回発生する」という施設もありました。
また、「スタッフ数に余裕があるため、通しと中抜け勤務を組み合わせて運用」というケースも見られます。
つまり中抜け勤務は、「ある・ない」だけで整理できるものではなく
「どの部署で行われているのか」「どの頻度で発生し、どの程度の拘束になっているのか」によって
実態が大きく異なります。
そのため現在の宿泊業界では、中抜け勤務を一律に良い・悪いで判断するのではなく
「施設ごとにどのような運用になっているか」を整理しながら見直していくことが重要になっています。
【制度解説】中抜け勤務は法律上どう扱われるのか?(労働時間・休憩)
ここまで、中抜け勤務が宿泊業界で定着してきた背景や、実際の運用状況について整理してきました。
一方で近年は、働き方改革の流れの中で
「中抜け勤務は法律的に問題ないのか」「長時間拘束にならないのか」といった疑問を持つ施設も増えています。
特に現在は、採用や定着だけでなく「法令順守」の観点から働き方を見直す動きも強くなっています。
ただし、中抜け勤務そのものが直ちに違法となるわけではありません。
重要なのは「労働時間」「休憩時間」「拘束時間」「勤務間インターバル」などを
どのように設計・運用しているかです。
ここでは、中抜け勤務と法律・制度の関係について整理していきます。
制度解説①:中抜け勤務そのものは違法ではない
まず前提として、中抜け勤務自体は法律で禁止されている働き方ではありません。
労働基準法では、次のように定められています。
- 「一定時間以上働く場合は休憩を与えること」
- 「法定労働時間を超える場合は残業管理を行うこと」
そのため、適切に休憩時間が確保されており
労働時間管理が行われている場合には、中抜け勤務そのものが違法になるわけではありません。
実際、宿泊業界だけでなく、飲食業、医療介護など
営業時間に波がある業界では、中抜け型のシフトが採用されるケースがあります。
一方で、中抜け勤務では「実際の労働時間」だけでなく、「拘束時間」が長くなりやすい特徴があります。
この点が、近年課題として注目されるようになっています。
制度解説②:問題になりやすいのは「拘束時間の長さ」
中抜け勤務では、実際の労働時間は法律内であっても、拘束時間が非常に長くなるケースがあります。
例えば、朝6時から朝食対応を行い、昼間に中抜け休憩を挟み、夜21時頃まで勤務する場合、
実働時間自体は8時間前後でも、「1日がほぼ仕事で終わる感覚」を持ちやすくなります。
特に問題になりやすいのが次のようなケースです。
- 休憩時間が長すぎる
- 帰宅できない
- 館内待機状態になる
- 連日中抜け勤務が続く
このような状態では「休憩はあるが、十分に休めない」という感覚につながりやすくなります。
また、拘束時間が長くなることで
「集中力低下、スタッフモチベーション低下」につながるという声も、今回の調査では見られました。
特に若手人材では、「拘束時間が長い職場」「生活リズムが不規則な職場」を避ける傾向も強くなっており
採用面への影響も大きくなっています。
そのため現在は、単純に法律上問題がないかだけではなく
「スタッフが継続的に働ける状態か」という視点で見直しを進める施設も増えています。
制度解説③:【2026年現在】「勤務間インターバル制度」は努力義務

現在、勤務間インターバル制度は「努力義務」とされています。
この制度は、勤務終了から次回出勤までの間に、一定時間以上の休息時間を確保する制度です。
例えば、夜21時に勤務を終えた場合、翌朝8時以降に出勤するといった形で
勤務と勤務の間に十分な休息時間を設けます。
厚生労働省では、長時間労働防止や健康管理の観点から導入を推進しており
働き方改革関連法以降、制度整備を進める企業も増えています。
一方で、2026年現在の時点では、すべての企業に対して義務化されているわけではありません。
そのため現時点では、「中抜け勤務がある=違法」という状態ではありません。
ただし現在は、勤務間インターバル制度の強化や、休息時間確保に関する議論が進んでいる段階でもあります。
勤務間インターバル制度については、厚生労働省の最新調査でも議論が進められています。
宿泊業での導入についての調査結果についても公開されています。
特に近年は「長時間拘束、睡眠不足、メンタル不調、過労リスク」などへの
社会的関心が高まっており、「働き続けられる環境づくり」が重視される流れになっています。
その中で、勤務終了から次回勤務まで「11時間程度の休息時間確保」を軸とした議論も進められています。
特に宿泊業界では「早朝、夜間勤務、中抜け勤務、繁忙期の長時間拘束」などが発生しやすいため
今後制度強化が進んだ場合、シフト設計へ影響が出る可能性もあります。
現場では、「今すぐ全面的に中抜け勤務を廃止する」というよりも、
将来的な制度強化を見据えながら、少しずつ働き方を改善していくという動きが増えています。
例えば現在は、次の通り「段階的な見直し」を進める施設も増えています。
- 中抜け回数を減らす
- 拘束時間を短縮する
- 通し勤務と組み合わせる
- マルチタスク化を進める
- 勤務間インターバルを意識したシフトへ変更する
また最近は、採用市場でも「働きやすさ」を重視する人材が増えています。
つまり、今後の宿泊業界では、「従来通り営業を回す」だけではなく
制度変更や採用環境の変化も見据えながら
持続可能な働き方へ移行していくことが重要になっていくと考えられます。
【改善事例】中抜け勤務を見直した施設事例と改善方法
ここまで、中抜け勤務の実態や、法律・制度との関係について整理してきました。
一方で現在は、採用難や働き方改革への対応を背景に、中抜け勤務そのものを見直す施設も増えています。
ただし実際には、「すぐに完全廃止できる施設」ばかりではありません。
特に旅館では、「朝夕に業務が集中する」「担当制接客が残っている」など、宿泊業特有の営業構造があります。
そのため現在は、「中抜け勤務をゼロにする」というよりも
「どう負担を減らすか」「どう働きやすく再設計するか」という方向で改善を進める施設が増えています。
ここでは、実際に中抜け勤務を見直した施設で行われている取り組みを整理していきます。
改善事例①:なぜ中抜け勤務を見直そうとしたのか?
中抜け勤務を見直す背景として、近年特に増えているのが「採用」と「定着」に関する課題です。
宿泊業界では現在、慢性的な人材不足が続いています。
その中で「拘束時間が長そう」「長く続けるイメージが持ちづらい」といった理由から
中抜け勤務が採用面で不利になるケースも増えています。
また現場でも「スタッフ疲弊、ヒューマンエラー、モチベーション低下」などを課題として
感じる施設が増えています。
特に小規模旅館では、少人数で営業を回しているため、一人あたりの負担が大きくなりやすい傾向があります。
その結果、中抜け勤務そのものよりも「長時間拘束」が問題視されるケースが増えてきました。
そのため現在は、「従来通りの働き方を維持する」だけではなく
「採用されやすく、続けやすい働き方へ変える」という視点で見直しを進める施設も増えています。
改善事例②:清掃内製化で「通し勤務化」を進める施設も増えている
中抜け勤務の改善策として、近年増えているのが「清掃業務の内製化」です。
従来は外部委託していた客室清掃を、自社スタッフが担当することで
日中時間帯にも業務を配置しやすくなります。
例えばこれまでは、「朝食対応 → 中抜け → 夕食対応」となっていたシフトを
「朝食対応 → 清掃 → チェックイン対応」のように再設計することで
「通し勤務化」を進める施設も増えています。
特に旅館では、チェックアウト後からチェックイン前までの時間帯に清掃業務が集中します。
この時間を有効活用することで「中抜け時間短縮」「拘束時間短縮」につながるケースがあります。
近年は、人手不足や働き方改革の影響から
宿泊業界では「清掃業務の在り方」そのものを見直す施設も増えています。
特に最近では、外部委託・内製化・マルチタスク運用など
施設ごとにさまざまな清掃体制の見直しが進んでいます。
清掃業務をどのように設計するかは、中抜け勤務の有無や働き方に大きく影響します。
近年は「外注」「内製化」「マルチタスク化」など、清掃業務の在り方を見直す施設も増えています。
宿泊施設における清掃運営の実態や最新の事例については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
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ホテル清掃の“新しい常識”が始まっている ~ホテル明治屋が示す、持続可能な運営モデルとは~
また、清掃を現場スタッフが行うことで、次のようなメリットにつながるケースもあります。
- 客室状態を把握しやすい
- 部門間連携が強くなる
- サービス品質改善につながる
一方で、「清掃負担が増えすぎる」「マルチタスク化によって逆に疲弊する」といった課題もあり
単純に導入すれば解決するわけではありません。
そのため現在は、「どの業務を組み合わせるか」を施設ごとに調整しながら、運用を見直すケースが増えています。
改善事例③:「マルチタスク化」で拘束時間を短縮する動きもある
近年の宿泊業界では、「マルチタスク化」を進める施設も増えています。
これは、一人のスタッフが複数の業務を担当できるようにする運営方法です。
例えば、「フロント+清掃」「接客+売店」「料飲+チェックイン対応」など
従来は分かれていた業務を横断的に担当する形です。
特に小規模旅館では、部署ごとに十分な人数を配置することが難しいケースも多くあります。
そのため「朝だけ必要な人」「夜だけ必要な人」を別々に配置するよりも
複数業務を担当できる体制へ変えることで、中抜け時間そのものを短縮する施設も増えています。
またマルチタスク化によって「シフト自由度向上」「人員配置効率化」につながるケースもあります。
一方で、教育負担が増えるため、「誰でもすぐにできる」というわけではありません。
特に旅館では接客品質も重要になるため、業務を増やすだけではなく
無理なく回る範囲で設計することが重要になります。
改善事例まとめ:重要なのは「中抜けをなくすこと」だけではない

現在の宿泊業界では、「中抜け勤務を完全になくすこと」が必ずしも正解とは限りません。
実際には「営業構造、客室規模、人員数、食事提供形態、地域特性」によって、最適な働き方は異なります。
例えば、完全通し勤務へ切り替えた結果「残業増加、日中稼働低下、人件費増加」につながるケースもあります。
そのため現在は、「中抜け勤務をゼロにする」よりも
「スタッフが継続的に働きやすい状態へ改善する」という考え方が重要になっています。
例えば、次のように段階的な中抜け勤務の見直しを進めるケースも増えています。
- 中抜け勤務の回数を減らす
- スタッフの拘束時間を短縮する
- 休憩環境を改善する
- 通し勤務と組み合わせる
- 勤務間インターバルを確保する
つまり現在は、中抜け勤務の有無だけではなく
「どう運用されているかが、採用・定着・働きやすさを左右する時代」になっているのです。
まとめ|中抜け勤務は「なくすか」ではなく「どう設計するか」の時代へ(宿泊業界)
今回の調査を通じて見えてきたのは、中抜け勤務は単なるシフト問題ではなく
「採用・定着・組織運営」まで含めた経営課題になっているということです。
特に現在の宿泊業界では「人が採れない」「採っても続かない」という課題が深刻化しています。
その中で、働き方は施設選びに直結する要素になっています。
以前であれば「宿泊業だから仕方ない」で受け入れられていた働き方も
現在の採用市場では通用しづらくなっています。
特に若手人材では「生活リズム、拘束時間、休日、働きやすさ」を重視する傾向が強くなっています。
そのため今後は「給与」だけではなく、どのような働き方ができるかまで含めて
採用競争力が決まる時代になっていくと考えられます。
一方で、宿泊業界には旅館特有の営業構造があります。
そのため、すべての施設が一律に「完全通し勤務化」できるわけではありません。
重要なのは、「中抜け勤務があるかどうか」だけではなく
「スタッフが継続して働ける状態」になっているかです。
例えば、次のように最適な形はどうなのか考え、見直していく必要があります。
- 拘束時間を短縮する
- 中抜け勤務の回数を調整する
- 休憩環境を整備する
- 通し勤務と組み合わせる
- マルチタスク化を進める
また現在は、勤務間インターバル制度など、働き方に関する制度整備も進み始めています。
今後は、「昔からこの形だから続ける」ではなく
これからも人が働き続けられる形かという視点が、より重要になっていくと考えられます。
中抜け勤務は、単純に「良い・悪い」で整理できるテーマではありません。
だからこそ今後は、宿泊業特有の営業構造を理解したうえで
現場運営と働きやすさのバランスをどのように取っていくのか。
この部分が、これからの宿泊業界における重要な経営ポイントになっていくのではないでしょうか。