
宿泊施設の集客戦略において、いまやInstagramは欠かせない存在です。
「売れている宿はSNSも強い」と言われますが、それは本当なのでしょうか。
本レポートでは、フォロワー数ランキング上位の旅館・ホテルを対象にInstagram運用を徹底調査。
投稿内容・更新頻度・エンゲージメント傾向を分析し、売上につながるSNS活用の実態を明らかにします。
宿泊施設の経営者・支配人の皆さまに向けて、明日から実践できるInstagram戦略のヒントをお届けします。
なぜ今、宿泊施設にInstagramが必要なのか?
宿泊業においてInstagramは、もはや「あると良い」ではなく“予約に直結する営業チャネル”に変わっています。
特にコロナ以降、旅行者の情報収集の主戦場はGoogle検索よりSNSに移り、数多くの宿が “Instagram発の予約” を実感し始めています。

理由は大きく4つあります。
① 旅行検討者の4割以上が「SNSから宿を選ぶ」時代になった
旅行消費者の行動は「写真ベースの意思決定」に大きくシフトしました。
Instagramで
- 客室の雰囲気
- 料理の世界観
- スタッフの温度感
- 周辺エリアの魅力
などを事前に確認し、“この宿いいかも” という第一印象がほぼSNSで形成されるようになっています。
特に30〜50代の旅行者は、SNSで“滞在イメージ”が湧いた宿を候補に入れやすく、広告よりも“投稿の自然さ”を信用します。
② 単価に影響する「ブランド力」を、もっとも低コストで構築できる
宿泊施設の価値は、
「どれだけ魅力を伝えられるか」で客単価が変わる業界 です。
Instagramは
- 写真で世界観
- ストーリーズで体験価値
- ハイライトで情報導線
を整えるだけで、OTAでは伝えきれない「らしさ」が伝わり、値下げせずに売れる状態が作れます。
宿力の現場でも、Instagram改善後に
- ADR:+3,000〜7,000円
- 自社予約比率:+8〜20pt
などの改善は珍しくありません。
③ OTAでは拾えない“指名検索”を増やし、販売コストを下げる
SNS経由で興味を持ったユーザーは
- Googleで宿名検索
- 公式サイト閲覧
- 自社予約(手数料ゼロ)
へと進みやすく、
“指名検索→自社EC”の導線が安定して増えます。
これは、OTAに依存する施設ほど効果が大きく、Instagramは固定費ゼロで広告効果を出せるチャネルといっても過言ではありません。
④ “求人力”が高まり、若手スタッフの採用にも直結する
いまの応募者、とくに20–30代は 求人票よりSNSで宿を見ます。
Instagramで
- 施設の雰囲気
- 働く人の人柄
- 館内の清潔感
- チームの空気感
が伝わると、「ここで働きたい」と思われやすく、採用コストの削減にもつながります。
■ポイント:Instagramは「集客 × 単価 × 採用」を同時に改善する宿の必須インフラ
Instagramはもはや“映えるためのツール”ではなく、
- 認知
- 単価維持
- 自社予約率
- 採用
- ブランド構築
を同時に叶える、宿泊施設にとって最も費用対効果の高いチャネルです。
そのヒントが売れる宿に隠されています。
売れる宿はうまくInstagramを使いこなしている──。
「売れる宿×フォロワーが多いアカウント」はどんな宿泊施設なのか。
次頁ではランキング結果とともに詳しく解説していきます。
売れている宿のInstagramフォロワーランキング調査結果
売上実績上位宿のInstagram運用状況を横断分析したところ、非常に象徴的な結果が見えてきました。
まずはフォロワー数上位施設をご覧ください。

※本ランキングは「2024年じゃらんOF THE YEAR じゃらん売れた宿対象」に入賞し、かつ月1回以上Instagram投稿を行っている宿泊施設を対象に作成しています。
ランキングから見える重要ポイント① トップ2は「星野リゾート 界」が独占
1位:星野リゾート 界 秋保(11.6万人)
2位:星野リゾート 界 霧島(11.5万人)
注目すべきは、両施設とも総部屋数49室という点です。
大型ホテルではありません。
数百室規模のリゾートでもありません。
それでも、700室超クラスの大型ホテルを上回るフォロワー数を獲得しています。
ここから読み取れるのは、
フォロワー数は「施設規模」ではなく「ブランド設計」で決まるという事実です。
② 大規模施設との対比で見ると、より明確になる
例えば、
・別府温泉 杉乃井ホテル(791室/6.8万人)
・フェニックス・シーガイア・オーシャン・タワー(734室/3.5万人)
といった国内有数の大規模施設もランクインしています。
しかし、客室数では圧倒的に上回るこれらの施設よりも、
49室の界ブランドがフォロワー数で上位に立っています。

Instagramは
・客室数
・建物規模
・歴史
で伸びるメディアではありません。
伸びる要因は、
・世界観の統一
・写真品質
・ブランド設計
・プロフィール導線です。
つまり、「ハードの大きさ」ではなく「ブランドの強さ」がフォロワー数を決めるということが、データから明確に示されています。
③ エンゲージメント率にも差がある
フォロワー数だけでなく、エンゲージメント率にも大きな差があり、
2%超の施設もあれば、0.4%台に留まる施設もあります。
重要なのは、
フォロワーを「集める力」と
フォロワーを「動かす力」は別である
という点です。
売れている宿は、
単にフォロワーが多いのではなく、
ブランド理解を深める投稿設計がなされていることが共通しています。
■ポイント:Instagram運用の成功事例として注目される「星野リゾート界」
ランキングの中でも特に象徴的なのが、トップ2を独占した「星野リゾート 界」ブランドです。
理由は明確です。
- 小規模(49室)で全国トップのフォロワー数
- ブランド横断で統一された世界観
- 投稿・プロフィール・ハイライトまで一貫した設計
つまり「Instagramを戦略的に運用した結果、ブランド価値を最大化している代表例」といえます。
次章では「星野リゾート界」が実践している具体的なInstagram設計を分解していきます。
星野リゾート界が実践するInstagramテクニック解説
前項でのランキング結果から分かるように「星野リゾート界」のInstagramは
「ブランドの世界観を保ちながら、予約導線と認知拡大を両立する」 というレベルに到達しており、旅館・ホテルのSNS運用の最適解に近い構造を持っています。
今回は、添付の画面にもあるとおり、界が実際に行っている“勝ちパターン”を4つの視点で整理します。

参照Instagramアカウント:@hoshinoresorts.kai
① 丸枠のロゴで統一感を演出──視覚で「ブランドを認識させる」
プロフィール画像は、施設名ではなく 丸型のブランドロゴ を採用。
Instagramの小さな表示でも識別しやすく、ユーザーがスクロール中に見つけやすい仕様です。
●ポイント(現場向け)
- ロゴは“文字入りバナー”よりも視認性が高い
- 丸型はInstagramの標準UIと馴染みやすく、印象が統一される
- グループ施設が多い宿ほど、ロゴ統一によりブランド回遊率が上がる
② オフィシャルタイトル+コンセプト説明で「誰のための宿か」を即伝達
界のプロフィール欄には、以下の3要素が明確に配置されています。
1)オフィシャルであることの明示
2)ブランドとしてのコンセプト
3)世界観と価値を短文で表現
これにより、新規ユーザーでも「どういう滞在価値を提供する宿なのか」を3秒で理解できます。
●ポイント
- OTAより先に“ブランド理解”が起きるため、単価維持につながる
- コンセプトを先に提示することで、フォロー率が上がり、質の高い見込み客が集まる
宿のSNSでは、“写真が良いだけ”ではフォローされない という鉄則があります。
界は文字情報でまず世界観を固め、その後の投稿と一貫する設計を取っています。
③ まとめストーリーズで「情報の棚」を作り、導線を整理
ハイライト(まとめストーリーズ)は、
- お知らせ
- 季節の過ごし方
- 施設紹介
- 各地の界ブランドの違い
など、ユーザーが知りたい情報を“棚”のように並べています。
●ポイント
- ストーリーズは流れるコンテンツなので、ハイライト化が必須
- よくある質問(Q&A)をまとめておくとDM対応が激減
- 旅行前の検討ユーザー(高温度層)を取り逃さない
Instagramは投稿よりも「ハイライト」を見て予約に進むケースが多く、界はここを非常に丁寧に作り込んでいます。
④ 投稿デザインは“旅雑誌”のように統一。写真の色調・余白・トーンまで設計
界の投稿は、写真単体の美しさだけでなく 「フィード全体での世界観」 を重視しています。
解説画像にもあるように:
- 旅雑誌のような落ち着いた色味
- 料理・客室・自然の写真をグリッドでバランス配置
- 余白を意識したシンプルなレイアウト
これにより、初めて訪れたユーザーが「この宿は丁寧さや上質さがある」と直感的に理解します。
●ポイント
- 世界観が整っている=“安心して高いお金を払える宿”として認識される
- 料理のみ/客室のみではなく、体験価値を全方位で伝えている
- 流れ作業になりがちな投稿を、ブランド表現の場に格上げしている
⑤ キャンペーン投稿はあくまで“世界観の中に”自然に配置
界はキャンペーン投稿を全面に押し出すのではなく、
ブランドビジュアルの中に溶け込むように配置しています。
●ポイント
- 販売色が強すぎるとフォロー解除が起きる
- 世界観を壊さずに販促できる
- 生活者のタイムラインに違和感が出ない
キャンペーンは必ず必要ですが、
「ブランド>販促」 を徹底することで、長期的にファンが増え、結果として予約につながる設計です。
まとめ|売れている宿は“Instagramを設計している

ここまで見てきた通り
売れている宿泊施設のInstagram運用には明確な共通点があります。
それは、感覚的な投稿ではなく、戦略的に設計されていることです。
最後に、重要ポイントを3つに整理します。
①Instagramは「集客ツール」ではなく“経営インフラ”
Instagramは単なるSNSではありません。
- 認知拡大
- 単価維持
- 自社予約比率向上
- 指名検索増加
- 採用力向上
これらを同時に改善できる、宿泊施設にとって極めて費用対効果の高いチャネルです。
売れている宿ほど、Instagramを“投稿業務”ではなく
営業導線の一部として設計しています。
②成果を分けるのは「投稿量」ではなく“設計力”
フォロワー数だけを追いかけても成果は出ません。
重要なのは、
- 世界観の統一
- コンセプトの明確化
- ハイライト設計
- 販促とブランドのバランス
という構造設計です。
売れている宿は、偶然伸びているのではなく、
伸びる構造を作っているのです。
③いま問われているのは「やるかどうか」ではなく“どう作るか”
宿泊業界において、Instagramはもはや選択肢ではありません。
旅行者はSNSで宿を探し、
滞在イメージを確認し、
ブランドに納得してから予約を行います。
つまり、Instagramの設計=予約導線の設計です。
ここを整えられるかどうかが、
今後の単価・利益率・ブランド力を左右します。
今回紹介した「星野リゾート界」のInstagramは、
世界観・情報発信・導線設計・デザインの統一が高いレベルで整理されています
宿力の支援現場でも、こうした要素を整理することで、
「フォロー率・クリック率・自社予約比率」が改善した事例が多数あります。
宿泊業においてSNSは、単なる写真投稿の場ではありません。
ブランドを伝え、予約につなげるための認知媒体です。
「なんとなく更新しているSNS」ではなく、
予約につながる営業チャネルとしての設計を目指していきましょう。